【目次】義弟の求めるままに女装して
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【第1章】
《妻の引き出し》《義弟の宿》《掲示板からのメッセージ》

【第2章】
《義弟に求められるまま》《私を女にして》《抱かれる悦び》


【あらすじ】
 妻が亡くなった後、その寂しさを私はあることで紛らわせていた。それは妻の形見として残された衣類を身につけ、女装して自分を慰めていた。女装で外出するのを楽しみ、ネットで女装写真をアップして、オフ会にも参加していた。しかし、それができなくなった。

 《第1章》

 昼間は会社に勤めている私は、毎週土日は連休。一時はゴルフにも夢中になって、早朝からゴルフバッグを車に積み込んで、職場の仲間とコースを回ることが多かった。

 しかし、妻の百合江が癌で入院してからは、ゴルフに行くことはなく、休みの日には、妻の病室で過ごすことが多かった。百合江が亡くなってから、釣りやゴルフに誘ってくれる先輩や上司もいたが、断ることの方が多かった。再婚を勧められても、ある事情で断っていたのです。

 週末の土曜日は、私には何も予定がないというか、誰もいない家の中で女装することが一番のスケジュールになったのです。

 朝7時には浴室で、汗を流し、誰に見せるわけでもないのに、脇毛も剃り、ショーツからはみ出しそうな恥毛もすべてカットして、身体中の無駄な体毛を処理し終わると、あることをするのです。

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 イチジクの形をした40㏄の容器を手にすると、肛門に押し当てて挿入します。
液体が入ると、少しひんやりします、さらにもう一本も注入するのです。
 20分ほど我慢、「アアッ、もうダメッ」、トイレで始末した後、「男の人を迎え入れる」準備が出来た自分を、イメージするのです。
ふたたび浴室で、ローズヒップの香りのする湯につかります。浴室を出ると、バスタオルだけの姿で二階に行くのです、そこは妻が生きているときは夫婦の寝室でした。

 今は私だけの寝室ですが、そこは、私が”ひとみ”になれる場所。妻のタンスから彼女の死後も捨てることができなかったものを取り出すのです。私が最近購入した下着もあるのですが、妻の引き出しには、色っぽさを感じさせる、ランジェリーが収納されているのです。

《妻の引き出し》

 妻の元気なころは、乳房もヒップも豊かでした。
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彼女が身に着けていたランジェリーは、ベビードールやスキャンティはそのままで着れた。
今の自分にとっては、ブラジャーのサイズが少しきつい程度。
 後ろのホックを一番外側にすれば十分身に着けることができたのです。

かえって、Dカップのブラジャーには詰め物が必要だったし、パンティやスリップ、ストッキングは、そのサイズで身体にフィットしていました。

「新しいリップやアイブローのペンシルを買いに行こうかしら?」
そんなことをひとり呟きながら、シームレスカップの白いブラジャーに、シリコン製の乳房を入れて、リフトアップする。

 豊かな胸を演出したあと、吸湿性の良いショーツを穿く。シェイプアップの機能もあるショーツは、丸みのあるカーブを作り出し、そこに一人の女性を感じさせていた。

「これは、結婚記念日にあなたにプレゼントされたものよ」
亡くなった妻に、そう言われたことがあった。
結婚してから、時にはワコールなどから発売された、高価なランジェリーなど「妻が身につけて欲しい」ものを、彼女にプレゼントしていた

 そんなことを思い出しながら、次はメイクにかかった。乳液を塗り終わり、液体のファンデーションを薄く顔に延ばし、眉を描き、アイシャドウ、口紅をぬり、最後に頬紅で仕上げる。ウイッグを被れば、そこにはいつもの自分ではなく、女になった自分がいた。

 女装した時の自分は、「ひとみ」。そして、ひとみに話しかけるのです。
「ひとみ、今日はどんなのにする?」
「化粧品を買ったり、シャンプーやリンスを買い足すだけだから」
「それじゃあ、半袖のカットソーに、スカートでいいわ」

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ひとりで会話を楽しみながら、スカートに合わせて、どの靴にするかを考えていた。
クローゼットから、白い箱に納められたサンダルを取り出した

玄関近くに置かれたソファーに腰を掛けて、サンダルの金具を止めた。

男性にはわからないかも、玄関でブーツやファスナーのある靴を脱ぐときに椅子があると便利なのです。

婦人用の財布の入っているバッグを持つと、車庫に止めている車に乗り、免許証、携帯、腕時計など忘れ物がないかを確かめた。
時々、免許証をいつもの財布から抜き出すのを忘れたり、女性用の腕時計を忘れたりしたことがあった。もちろん、外出先で化粧を直すための化粧ポーチも、忘れることができないものです。

 女装で出かけるというのも、準備が大変。女装で行くところは、ネットで調べて、近くに駐車場があるかどうか、料金やサービスを確かめてから出かけるのです。

 週末のお店は、女装子がたくさん集まるところも多いけど、男性客もいます。女装者にも、若くてきれいな子もいれば、そうでない方もいて、お店によって雰囲気も随分違うのです。

 そういうお店の中で、自分のお気に入りの「女装の楽しめるお店」を基本にして、2,3箇所を回ることもあります。お店では男女のカップルで話が合えば、近くにあるホテルで時間を過ごして、またお店に戻ってくる場合や、女装子をお持ち帰りする男性客もいます。

 私は、まだ男性客に誘われても断るので、「まだ、おねんね」とか、「男を知らないお嬢様」と、お店のママから言われていました。自分でも、女装している自分をエスコートしてくれる男性と、いつか女としての経験をしてみたいと思ってはいたのです。

《義弟の宿》

「ねえ、兄さん、宿泊代が助かるから、泊めてやってよ」と、妹から電話で頼まれたのです。

 地方都市に住む私の妹、その夫(義弟)、なんですが、ある資格をとるための講習会場が、東京なんです。その講習会に参加するために、私の家に泊めてほしいということなのです。
そのことが、私の生活を大きく変えることになってしまったのです。

 金曜日の夜に、義弟が泊まりに来ます。土曜日の朝からの講習会が終わると、もう一晩泊り、次の日曜日には帰ってしまうのです。
義弟は、もともと東京の出身、学生時代の友人に会うと言っては、講習会が終わっても土曜の夜は、深夜まで出かけてしまうことも多かったのです。

 週末の夜は、ひとみになって出かけることが出来なくなってしまったのです。それどころか、金曜日の夜、部屋の片づけを済ませて、新聞や、燃えるごみもゴミ置き場に運び終わると、義弟の泊まる部屋の掃除をして、シーツを洗濯したものに取り換えます。

 掃除機は、音のしない静かなタイプで、夜のお掃除に重宝します。妻が生きていたころ、掃除機の音がうるさいからと、私が一緒に電気屋に行って買ったものです。掃除が終わった頃、夜遅くに義弟が泊まりに来るのです。

 なぜ、私が掃除や洗濯をしているかというと、妹に「一人じゃ大変でしょ、再婚したら」と言われたくなかったからです。
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見合いをしないかと再婚を勧められても、僕には、秘密の恋人”ひとみ”がいたから断っていたのです。

夜は、ベッドで僕の思い通りに装い、僕と一緒に眠り、僕の望むようなことをして楽しませてくれたのです。
彼女が逝くときは、必ず僕も一緒に逝けたのです。


 そして燃えるように暑い八月の昼下がり、私は女装のまま、近くのお店にお買い物に行きました。
まだ厳しい日差しのなか、”ひとみ”でのお出かけです。
木陰では、涼しい風も吹いていました。
その日は、のんびりとお酒でも楽しみたかったのです。
ショッピングセンターでお酒を買い、バッグの中に入れて、自宅に帰りました。
室内はエアコンが効いていて、涼しくてほっとしました。

 ブラジャーの胸の谷間にも、汗びっしょり、額からも汗がにじんできます。冷えたグラスを取り出し、梅酒のサワーをロックにして、一番エアコンの風があたる場所、リビングのソファーに座り、涼んでいたのです。

 土曜日のその時間、いつもなら、まだ義弟が帰ってくる時間ではなかったのです。 突然、玄関ドアの前で足音が止まり、カチャと鍵を開ける音がしたのです。

「講師の都合で早く終わっちゃって、・・・」
まだ夕方だったので、まさかと思っていたら、リビングに義弟が入ってきたのです。

いつも夜遅くに帰宅する義弟には、勝手に家に入れるように鍵を渡していました。義弟は、私をみつめて驚いていたようです。

「義兄さん?」
金縛りにあったように、私は動けずにいました。
義弟は,私の姿をみつめています。
短い時間でしたが、時間が止まったように感じました。

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何と言い訳しようか、そう思った時です。
「義兄さん、暑くて汗をかいたから、シャワー使わせて下さい」

そう言って、義弟は自分の部屋に行き、着替えを持って、肌着のシャツとパンツだけの弟が浴室に入っていきました。

シャワーの音がして、義弟は浴室で身体を洗っているようでした。
その間に大急ぎで二階にあがり、スカートや女性の下着を脱いで、洗面台でメイクを落として、Tシャツにジーンズ姿に着替えました。

その時の私は、心臓の鼓動を感じるほどドキドキしていました。

しばらくは、自分の部屋に隠れるようにしていました。

《掲示板からのメッセージ》


 女装した自分の姿を、見られてしまった。
自分の部屋に入ってから、しばらくはドレッサーの前で椅子に腰を掛けたままで、動けずにいたのです。

 自分が女装していたことは、きっと義弟から伝わるだろう。
そして、妹から「変態」扱いされてしまうのだろう。

 義弟が来ている間だけでも、女装をやめておけばよかった。
そんな想いが、何度も何度も自分を責めているのだった。

 ドレッサーの引き出しをあけて、何枚かの写真を取り出した。
そこには、亡くなった妻の写真、彼女のことは今も忘れられない。
どうして自分は女装するようになったのだろう。

 誰にも明かしていない、私の秘密。それは、妻亡きあと、寂しさをまぎらわすために彼女の下着を抱きしめ、自分を慰めていた。
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初めて彼女のランジェリーを身につけで女装したときは、なぜか満たされた気分になった。それは次第にエスカレートして、完全に女装して、一人の女になる悦びに目覚めた。

毎日、浴室で男の匂いを洗い流し、体毛を剃り落とし、乳液や基礎化粧品で肌の手入れをした。

 週末を迎えると、女性用の下着を身につけ、化粧をしてウイッグで装った自分で鏡を見て、仕上がりを楽しむようになっていた。

「ひとみ、今夜も素敵よ」
女になりきることはできないけれど、いつしか女性として装った自分を鏡で見て、"ひとみ"と呼ぶのだった。

 そういう、自分の秘密として隠し続けていたかったのに・・・義弟に見られてしまった。

 誰にも知られたくない、・・・でも、本当は女装する自分を認めてほしかった。
きっといつか、女装する自分を理解してくれる
受け入れてくれる人を求めていたのかもしれない。

 女装して、とにかく女になりきっている時、女性として愛してくれる人を求めていたし、
女性として愛されてみたいと夢見ていた。

 ドレッサーの上で、小型のノートPCを開いた。
いつものID、パスワードを入力した。

 メールが届いていた、ほとんどが不要なものだったが、
「ひとみ」宛のものがいくつか届いていた。

「掲示板でお写真拝見しました、優しそうでとてもきれいです。以前にもメールしました。覚えていませんか?ひろしです。ひとみさんの住んでいる東京には、出張で月に3回ぐらい行きます。ぜひ、週末の夜に、一度お会いしたいです 」

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 時々、女装子の画像掲示板に自分の写真を載せていた。
毎回、たくさんのメールが来た。
 写真付きか真面目な内容のメールに限定していたが、なかなか誰に返事するか、迷ってしまい、結局、希望通りの人がいないため、リアルに会うことはなかった。

 今の自分の希望は、「40代で、日曜の夕方会える人」だった。

 義弟が泊りに来るため、金曜、土曜の午後から女装することが難しい自分にとって、日曜の午後か夜しかないのだが、それが条件として合わせにくいのだろうと思った。


《つづく》  続きは、 義弟の求めるままに女装して【2】へ
 




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