宇髄天元「いいか?俺は神だ!」
宇髄天元「お前らは塵だ!」
宇髄天元「まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!ねじ込め!」
宇髄天元「俺が犬になれと言ったら犬になり」
宇髄天元「猿になれと言ったら猿になれ!」
宇髄天元「猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い、全身全霊でへつらうのだ!」
宇髄天元「そしてもう一度言う!俺は神だ!」
我妻善逸「(やべぇ奴だ)」
竈門炭治郎「具体的には何を司る神ですか?」
我妻善逸「(とんでもねぇ奴だ)」
宇髄天元「いい質問だ!お前は見込みがある!派手を司る神、祭りの神だ」
我妻善逸「(アホだな、アホを司っているな、間違いなく)」
嘴平伊之助「俺は山の王だ!よろしくな!祭りの神!」
宇髄天元「何言ってんだお前…気持ち悪い奴だな」
我妻善逸「(いや!あんたとどっこいどっこいだろ!引くんだー!?)」
嘴平伊之助「あァ!?何だとてめェ!」
宇髄天元「キモい」
嘴平伊之助「放せ権八郎!」
我妻善逸「(同じような次元に住んでる奴に対しては嫌悪感があるんだな…)」
宇髄天元「遊んでる暇はねぇんだ。行くぞ」
宇髄天元「付いてこい」
嘴平伊之助「これが…祭りの神の力…」
竈門炭治郎「いや、あの人は柱の宇髄天元さんだよ」
「いってらっしゃーい!」
宇髄天元「いいかお前ら?目立つことすんじゃねえぞ。あくまで様子見だからな。絶対に車から降りるんじゃねえぞ」
竈門炭治郎「あっ!駄目だ善逸!伊之助!戻るんだ!」
宇髄天元「クソガキ共が!!」
竈門炭治郎「落ち着け伊之助」
宇髄天元「待ちやがれこら!」
宇髄天元「おい黄色いの!そこを動くな!」
我妻善逸「これが…」
竈門炭治郎「昼みたいだ…」
嘴平伊之助「何だこりゃあ!!人だらけじゃねえかァ!!」
嘴平伊之助「猪突猛進ー!!」
宇髄天元「おい!黄色い頭の奴はどこ行った!?」
竈門炭治郎「えっ!?」
「そこの黄色い子、寄っといでよ~」
「お菓子あるよ」
我妻善逸「(奇麗なお姉さんがいっぱいだぁ!)」
宇髄天元「やかましい!お前にはまだ早え!」
宇髄天元「よく見とくんだな、ここはな、昼は眠りに落ちて夜にこうやって光り輝く、鬼にはうってつけの場所だろ」
宇髄天元「遊女になる女達はたいてい貧しさや借金なんかで売られてくる」
宇髄天元「その代わり衣食住は与えられ出世できりゃあ金持ちに身請けされることもある。遊女にも位があるが最高位の花魁ってのは別格で美人は当たり前。頭も良けりゃ芸事も極めてる」
宇髄天元「それぞれの店が時間も金もかけた稼ぎ頭。特別な女だ」
竈門炭治郎「そうなんですね…」
宇髄天元「いいか聞け。遊郭に潜入したらまず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから」
我妻善逸「とんでもねぇ話だ!!」
我妻善逸「ふざけないでいただきたい!自分の個人的な嫁探しに部下を使うとは!」
我妻善逸「アンタみたいに奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも!だがしかし、鬼殺隊員である俺たちをアンタ嫁が欲しいからって」
宇髄天元「馬ァ鹿かテメェ!俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収拾に励んでたんだよ!定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての!」
我妻善逸「そういう妄想をしてらっしゃるんでしょ?」
我妻善逸「キャー――!!」
宇髄天元「これが鴉経由で届いた手紙だ」
竈門炭治郎「随分多いですね。かなり長い期間潜入されてるんですか?」
我妻善逸「三人…嫁…てめっ…てめぇええ!!」
我妻善逸「何で嫁三人もいんだよ!!ざっけんなよ!!」
宇髄天元「何か文句あるか」
竈門炭治郎「あの…手紙で来る時は極力目立たぬようにと何度も念押ししてあるんですが…」
竈門炭治郎「具体的にどうするんですか?」
宇髄天元「そりゃまあ変装よ。不本意だが地味にな」
宇髄天元「俺の嫁は三人共優秀な女忍者くの一だ。花街は鬼が潜む絶好の場所だと俺は思ってたが俺が客として潜入した時、鬼の尻尾は掴めなかった」
宇髄天元「だから客よりももっと内側に入ってもらったわけだ。すでに怪しい店は三つに絞っているからお前らはそこで俺の嫁を探して情報を得る。ときと屋の“須磨”、荻本屋の“まきを”、京極屋の“雛鶴”だ」
竈門炭治郎「うわっ!!」
「失礼いたします。ご入り用のものをお持ちいたしました」
『善子(ぜんこ)・炭子(すみこ)・猪子(いのこ)』
「いや…ちょっとうちでは…」
宇髄天元「そこを何とかお願いできないかねぇ。女将さんに仕込んでもらえたら光ると思うんだよなぁ」
「まあ一人くらいならいいけど~」
「えぇ!?」
宇髄天元「じゃあ一人頼むわ、悪ぃな、奥さん」
「じゃ真ん中の子をもらおうかね。素直そうだし」
炭子「一生懸命働きます!」
宇髄天元「ほんとにダメだなお前らは!二束三文でしか売れねぇじゃねぇか!」
善子「俺、あなたとは口利かないんで」
善子「女装させたからキレてんのか?何でも聞くって言っただろうが」
善子「(女装なんかどうでもいいんじゃボケが!おめぇのツラだよ!普通に男前じゃねえか、ふざけんなよ!)」
猪子「おい!何かあの辺人間がうじゃこら集まってんぞ」
宇髄天元「ときと屋の鯉夏花魁だ。一番位の高い遊女が客を迎えに行ってんだよ。それにしても派手だぜ」
善子「嫁!?もしや嫁ですか!?あの美女が嫁なの!?あんまりだよ!三人もいるのみんなあんな美女っすか!?」
宇髄天元「嫁じゃねえよ!」
猪子「歩くの遅…山の中にいたらすぐ殺されるぜ」
遣手「ちょいと旦那、この子はうちで引き取らせてもらうよ。いいかい?」
宇髄天元「ああ、あんた確か…」
遣手「そう、荻本屋の遣手でござんすよ」
宇髄天元「荻本屋さんの方から目ぇ付けてもらえるたぁこりゃありがたい」
宇髄天元「けどどういう風の吹き回しだい?」
遣手「なーに、あたしの目に狂いはないのさ」
宇髄天元「達者でな~!猪子」
善子「(やだ!アタイだけ余ってる!)」
遣手「変なふうに顔を塗ったくられていたけど落としたらこうよ!すごい得したわ!こんな美形の子安く買えて」
遣手「仕込むわよ仕込むわよ!京極屋の蕨姫やときと屋の鯉夏よりも売れっ子にするわよ!」
「でも何か妙にこの子がっちりしてるんだけど」
「ふっくらと肉づきがいい子の方がいいでしょー!」
「ふっくらっていうかがっちりしてるんだけど…」
「あ…あの子三味線うまいわね…」
「そうね、すごい迫力、最近入った子?」
「でも…不細工よねぇ…よく入れたわねお店に」
「あの子連れてきたのがものすごいいい男だったらしいわよ」
「まあ!ほんとに?見たかった!」
「フフフ…アタイには分かるよ。あの子はのし上がるね。自分を捨てた男見返してやろうっていう気概を感じる。そういう子は強いんだよ
宇髄天元「便所掃除でも何でもいいんでもらってくださいよ~いっそタダでもいいんでこんなのは」
善子「(見返してやるあの男!アタイ絶対吉原一の花魁になる!)」
炭子「はい!」
「人手が足りなくってね、これ運んでくれる?」
炭子「分かりました!すぐ運びます」
「ありがとう。よく働くねぇ」
「おしろいを取ったら額に傷があったもんだから昨日は女将さんが烈火のごとく怒っていたけど…」
炭子「はい!働かせてもらえてよかったです!」
「なんか…力強くない?」
「強っ…」
「京極屋の女将さん、窓から落ちて死んじゃったんだって」
「最近は足抜けしていなくなる姐さんも多いしね」
「すごい荷物だね」
炭子「鯉夏花魁への贈り物だよ」
炭子「(須磨!宇髄さんの奥さんだ)」
鯉夏「噂話はよしなさい。本当に逃げきれたかどうかなんて誰にもわからないのよ」
鯉夏「お菓子をあげようね」
鯉夏「ひとりでこっそり食べるのよ」
「わっちも欲しい!」
「花魁花魁」
鯉夏「だめよ。さっき食べたでしょう」
炭子「あの、須磨花魁は足抜けしたんですか?」
鯉夏「どうしてそんなことを聞くんだい?」
炭子「(警戒されている。うまく聞かないと…須磨さんのことを…)」
炭子「えっと…須磨花魁は…私の」
炭子「私の…姉…なんです…」
「えーーっ!!」
鯉夏「姉さんに続いてあなたも遊郭に売られてきたの?」
鯉夏「そうだったの…確かに私も須磨ちゃんが足抜けするとは思えなかった。しっかりした子だったもの」
鯉夏「男の人にのぼせている素振りもなかったのに…だけど日記が見つかっていて、それには足抜けするって書いてあったそうなの」
炭子「(足抜け…これは鬼にとってかなり都合がいい。人がいなくなっても遊郭から逃亡したのだと思われるだけ。日記は恐らく偽装だ)」
炭子「(どうか無事でいてほしい。必ず助け出すから、須磨さん)」
宇髄天元「(今日も異常なし)」
宇髄天元「(嫌ぁな感じはするが、煙に巻かれているようだ。気配の消し方の巧さ、地味さ)」
宇髄天元「(もしやここに巣食っている鬼、上弦の鬼か?)」
宇髄天元「(だとするとド派手な殺り合いになるかもな)」
「あらヤエちゃん、ちょっといいかい?」
「まきをさん大丈夫かしらね」
「具合が悪いって言ったきりで病院にも行かないし、そろそろ女将さんに引きずり出されちゃうわよ」
猪子「(まきを!?宇髄の嫁だ。やっと名前を聞けたぜ。具合が悪い?それだけで連絡が途切れるか?)」
猪子「あの女…こっちから来たな」
猪子「(行ってみるか)」
「あら、猪子ちゃん」
「慌てると危ないよ」
「静かな子ねぇ」
宇髄天元「お前は声が太いから絶対喋るなよ!裏声も下っ手くそだからすぐ男だってバレるぞ、マジで」
猪子「(どうしろってんだちくしょう!)」
「お前は誰にこの手紙を出していたの」
「何だったかお前の名は」
「ああ、そうだまきをだ。答えるんだよ、まきを」
炭子・善子・猪子「ニンニン!」
善子「(悔しいけど美形だ)」
猪子「何だよ!」
炭子「ここで大正コソコソ噂話。善逸は何だかんだ三味線が気に入ってかなりの腕前になったみたいですよ」
善子「お店に一人きりは怖いから遊びに行っていい!?」
炭子「善逸はかわいがられてるって聞いたけどな…」
善子「そうなの?じゃあやっぱり吉原一の花魁目指す!」
善子「ん?」
猪子「どした!?」
炭子「次回、第三話 何者?」
炭子「善逸!大丈夫か!?善逸~!」