アウディSQ2(4WD/7AT)
痛快なスポーツモデル 2022.09.07 試乗記 マイナーチェンジした「アウディQ2」の高性能スポーツバージョン「SQ2」に試乗。リフレッシュされた内外装の仕上がりや、最高出力300PSを誇る2リッター直4ターボエンジンと4WDシステム「クワトロ」が織りなすその走りを、あらためて確かめてみた。Q2で唯一のクワトロ
アウディのSUVは「Qファミリー」と呼ばれ、プレミアムSUVクーペの「Q8」を筆頭に、「Q7」「Q5」「Q4 e-tron」「Q3」、そしてこのQ2と大家族化が進んでいる。そんなQファミリーのなかで、若者をターゲットとしたエントリーモデルが全長4200mmのコンパクトSUV、Q2である。他のモデルとは異なる若々しい雰囲気が魅力といえる。
Qファミリーの「Q」は、アウディ伝統の4WDであるクワトロ(quattro)に由来するが、コンパクトSUVではFWDが主流というのはQ2でも例外ではない。日本のラインナップを見ると、「Q2 35 TDI」と「Q3 35 TFSI」はどちらもFWDであり、クワトロは「Sモデル」と呼ばれるスポーツバージョンのSQ2だけ。しかも、降雪地域の移動を支える生活四駆ではなく、スポーティーな走りを目指した特別な存在だ。
いまや最小のSモデルでもあるこのSQ2が、マイナーチェンジにより内外装をリフレッシュ。以前のSQ2は縦のダブルバーを採用するシングルフレームグリルにより高級感を醸し出していたが、新型は上質さよりも押しの強さを前面に出したデザインになり、これまでよりわかりやすいキャラクターに変わったといえる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
そのプライスに驚く
一方、インテリアは、ステアリングホイールとシフトセレクターが新しくなり、さらに細かいところでは、オプションのサウンドシステムが、デンマークのバング&オルフセンからアメリカのソノスに変更されている。
それ以外はほぼ従来のデザインを踏襲していて、例えば、ナビゲーションのディスプレイは、他のアウディがタッチパネル式に移行しているのに対して、このSQ2はシフトセレクターの手前にあるコントローラーで遠隔操作する従来タイプのままだ。ただ、このスタイルは慣れると案外使いやすく、あえてそのまま残しているのは、個人的には大歓迎である。
ダイヤモンドステッチが施された「マグマレッド」のファインナッパレザー仕立てとなるスポーツシートやレッドのリングがあしらわれたエアコンの吹き出し口などがSQ2のコックピットを彩るが、これらのほとんどはメーカーオプションとして追加されたもの。SQ2の車両本体価格は620万円と決して手ごろではないが、試乗車にはさらに147万円ものメーカーオプションがおごられており、総額767万円というプライスには、さすがに一瞬ひるんでしまった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
涼しい顔で踏み切れる
ただ、実際に運転してみると、実に痛快なスポーツモデルであることがわかる。SQ2に搭載されるのは2リッター直4直噴ターボで、最高出力はなんと300PS! 他の横置きエンジンのSモデルと同じく、デュアルクラッチギアボックスの7段Sトロニックと、電子制御の湿式多板クラッチを用いた4WDがこのハイパワーを受け止める。
この2リッターターボは低回転から実に力強く、SQ2は動きだしからとても軽快。アクセルペダルの動きに対する反応も素早く、街なかでも扱いやすいのがいい。
一方、ここぞという場面でアクセルペダルを深く踏み込むと、2リッターターボは威勢のいいサウンドを発しながら3000rpmを超えたあたりから6000rpmを上回るまでパワフルな加速を見せてくれる。
その際、自慢のクワトロが最大400N・mもの大トルクをきっちりと路面に伝えてくれるので、ドライコンディションであればホイールスピンとは無縁であり、加速中に不安定な動きを見せることもない。ハイパワーを持て余すことなく、涼しい顔でアクセルペダルを踏み切れるのが、Sモデルの真骨頂だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
全高1525mmの妙
SQ2は全高が1525mmとSUVとしては低めのプロポーションを採用するが、これが走りにも良い影響を与えている。コーナリング時にロール感はあるものの、ロールスピードは抑えられており、安定した姿勢を保ったままコーナーを駆け抜けることができるのだ。クワトロ特有の高い接地感もしっかりと受け継がれている。ホットハッチのように軽快、とはいかないが、SUVであってもSモデルの名にふさわしいスポーティーな走りが楽しめるのだ。
高速走行時の直進安定性やフラット感も上々。ただ、その代償として、少し硬めにしつけられたサスペンションにより乗り心地はやや硬めで、舗装の荒れや目地段差などを通過した際のショックを拾いがちなのが惜しいところ。試乗車にはオプションの235/40R19サイズのタイヤが装着されていたが、標準サイズ(235/45R18)のままならもう少し乗り心地がマイルドなのかもしれない。それでも、しばらく運転していれば慣れる硬さで、痛快な走りのためなら十分納得のいくものだろう。
個人的には、SUVスタイルを採用しながらも全高が1550mm未満に抑えられているおかげで、立体駐車場で困らないのがうれしい。確かに値は張るが、アウディの魅力が凝縮されたSQ2は個性際立つ一台である。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
アウディSQ2
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4220×1800×1525mm
ホイールベース:2595mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:300PS(221kW)/5300-6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-5200rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96Y/(後)235/40R19 96Y(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:11.6km/リッター(WLTCモード)
価格:620万円/テスト車=767万円
オプション装備:ボディーカラー<タンゴレッドM>(7万円)/アルミホイール<5Vダブルスポークデザイン グラファイトグレー 8J×19+235/40R19タイヤ>(12万円)/ブラックAudi rings&ブラックスタイルパッケージ<ブレードブリリアントブラック、エクステリアミラーハウジング>(15万円)/ナビゲーションパッケージ<MMIナビゲーションシステム+TVチューナー+6スピーカー+バーチャルコックピット>(35万円)/SONOSサウンドシステム(12万円)/テクノロジーパッケージ<スマートフォンインターフェイス、マルチカラーアンビエントライティング、デコラティブパネル、ライトグラフィック[マルチカラーアンビエントライティング専用]>(5万円)/カラードブレーキキャリパー レッド(6万円)/マトリクスLEDヘッドランプ+ダイナミックターンインディケーター<フロント&リア>(12万円)/コンビニエンス&アシスタンスパッケージ<サイドアシスト+アウディプレセンスベーシック+アダプティブクルーズアシスト+ハイビームアシスト+オートマチックテールゲート+ステアリングホイール3スポークレザーマルチファンクションパドルシフト>(17万円)/SQ2インテリアデザインパッケージ<ファインナッパレザー[マグマレッド]+ドアハンドル[アルミニウムペイント スレートグレー]+レッドアクセントリング付きエアコン吹き出し口+フロアマットレッドステッチ[フロント&リア]>(26万円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:3163km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:108km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.1km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |
拡大 |
生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BMW iX2 xDrive30 Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2024.10.21 フルモデルチェンジで第2世代に進化したBMWのクーペSUV「X2」。そのラインナップに加わったBEV「iX2」のステアリングを握り、一新されたクーペライクなフォルムと、システム最高出力306PSを誇る電動4WDパワートレインが織りなす走りを確かめた。
-
スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX プロトタイプ(4WD/CVT)【試乗記】 2024.10.17 「スバル・クロストレック」にハイブリッドモデルの「S:HEV」が登場。もちろん自慢の水平対向エンジンとシンメトリーAWDはそのままに豊かなパワーと優れた燃費を実現した、スバルが言うところの「ストロングハイブリッド」である。プロトタイプモデルの仕上がりをリポートする。
-
ホンダ・シビックRS(FF/6MT)/シビックEX(FF/CVT)【試乗記】 2024.10.16 マイナーチェンジした「ホンダ・シビック」が登場。専用チューンが施された最高出力184PSの1.5リッター直4直噴ターボエンジンに6段MTを組み合わせる「RS」グレードと、同出力のベースエンジンを搭載するCVT車「EX」の初公道試乗リポートをお届けする。
-
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATIC(4WD/8AT)【試乗記】 2024.10.15 メルセデス・ベンツのSUVのなかでも、比較的コンパクト(それでも十分デカいが)な「GLB」。全長4.7mを切る3列シートSUVは、他の兄弟とはどう違うのか? 多人数乗車モデルとしての資質はいかほどか? 改良後のディーゼル+4WDモデルで確かめた。
-
メルセデスAMG G63ローンチエディション(4WD/9AT)【試乗記】 2024.10.14 「メルセデス・ベンツGクラス」のマイナーチェンジモデルが日本に上陸。ご覧のとおり外観はほとんどこれまでどおりだが、中身は時代の要請に合わせてきっちり進化を果たしている。V8エンジン搭載の「メルセデスAMG G63ローンチエディション」を試す。
- アウディの新車カタログ
- SQ2の新車カタログ
- アウディの中古車
- SQ2の中古車
- 自動車人気ランキング
- 中古車人気ランキング
-
NEW
メルセデスAMG GT63 PRO 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】
2024.10.23試乗記「メルセデスAMG GT」のモデルラインナップに「GT63 PRO 4MATIC+」が追加設定された。確かにエンジン等のスペックはシリーズ最高峰に達しているが、数値的なリードはわずかだ。「PRO」とまで名乗らせた理由を、サーキットドライブで探ってみた。 -
NEW
日産ノート オーラAUTECH(FWD)【試乗記】
2024.10.23試乗記「日産ノート オーラ」のマイナーチェンジを機に登場した「ノート オーラAUTECH(オーテック)」に試乗。AUTECH専用となる内外装デザインやカスタマイズアイテムをチェックしながら、「プレミアムスポーティー」をうたうその走りを報告する。 -
NEW
第44回:アストンマーティン・ヴァンキッシュ(後編) ―ここから始まる“野蛮なアストン”の復活劇―
2024.10.23カーデザイン曼荼羅V型12気筒エンジンを搭載した、新しいアストンマーティンの旗艦「ヴァンキッシュ」。アストンはどのような変遷を経てこのアグレッシブな造形に至ったのか? これからのアストンのデザインはどのように進化していくのか? 元カーデザイナーとともに考えた。 -
歴代の記念モデルでたどる「マツダ・ロードスター」の35年
2024.10.22デイリーコラム「マツダ・ロードスター」が誕生35周年を迎え、ファンイベントの場でこれを祝う記念モデルがお披露目された。その中身を詳しく見つつ、10、20、25、30周年の節目でリリースされた過去の記念モデルも振り返ってみる。 -
いまからデビューが気になっているクルマは?
2024.10.22あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジニアとして長年クルマの開発を取りまとめてきた多田哲哉さん。では、今後出ることが予想される新型車のなかで、気になっているモデルはあるのか? その理由についても聞いてみた。 -
マクラーレン・アルトゥーラ スパイダー(MR/8AT)【試乗記】
2024.10.22試乗記「マクラーレン・アルトゥーラ スパイダー」のルーフはあっという間に開いて瞬く間に閉まる。つまりいつでもどこでも700PSの最高出力とオープンエアドライビングが楽しめる。東京を離れて西を目指したのは、ある晴れた日のことだった。